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女性たちの記録を
まとめたい


区民が語り 区民が綴る
 「杉並の女性史」
―明日への水脈ー

 
発行への道

                      

杉並区女性史編さんの会


小林五十鈴
 
 
 
 ある時、女性史を研究している織田宏子さんから「杉並の女性たちの記録をまとめておかないとね。」というお誘いの電話がかかってきた。以前、私も関わっていた行政発行の「女性ニュース・セシオン杉並」には活躍する女性たちのインタビューを掲載していたが、紙面の都合で中断したのを思い出した。

  早速、「地域女性史をつくる会」が小林五十鈴、織田宏子、青沼康子、向山京子、大野田鶴子、片桐米子の六人で結成された。メンバーは「婦人だより」「女性ニュース・セシオン杉並」「ゆうCAN」の編集に参加した者だけだった。


 まず、「地域女性史をつくる会」は杉並区立男女平等推進センター・平成十年度区民企画事業で、「女性史に学ぶ」をテーマに八回シリーズの講座を開くことができた。戦中戦後の女性たちがひたむきに生き、暮らしを担った話を聞き取り、記録にまとめたいのでご一緒にやりましょうというお誘いであった。女性史研究家の折井美耶子氏は、聞き取りはできるだけ早く、元気にしておられるうちに聞き取りをするようにといわれ、講座開催中に公民館で学習していた「杉の子会」から聞き取りを始めた。


  区民企画事業が開催される九月はじめに、「第七回全国女性史交流のつどい」がかながわ県立女性センターで催されることを知った私たちは一泊二日の日程で参加した。全国から女性史に関心をもって集まった人たちの中には男性の姿もちらほらあった。

 1975年の国際婦人年は「平等・開発・平和」をスローガンに女性問題を推進してきた。女性史を掘り起こすことで今まで見えなかった、見ようとしなかった問題が女性問題として顕在化され、それが意識啓発や制度見直しに繋がる大きな成果になっていった。しかし、一定の改善が進むと、意識の多様化とともに問題の所在はかえって見えにくくなり、地域女性史の重要性が問われだして、女性史の掘り起こしがさらに重要になってきた。

 1200人の熱気は地域女性史の分科会にも集中し、急遽地域女性史は大会場に変更するという事態となり私たちも入れないかと一時はひやひやした。全国津々浦々、みんなの関心が地域女性史にあることを改めて感じた。すでに女性史を編纂し終えて本を持参して宣伝する地域や編纂での苦労話を発表 する地域やこれから地域女性史を編纂するために学習にやってきた地域、中には行政が主導で 女性史を編纂するために来ているという所もあった。今まで出会ったことがない熱心な女性たちの姿をみて、女性史に関心をもっている杉並の人たちとの出会いに夢がふくらんだ。そして歴史を掘り起こし調査することから現在の自分を見つめ直すということの大切さを改めて痛感した。
 

●区長への要望書

  女性史を発行するにはもう少し学習が必要で、平成十一年度区民企画事業では「二十世紀の女性のあゆみ」新ミレニアムへの展望と題して 九月四日から四回シリーズ講座を開催することができた。

  2000年1月28日に熊本八代市で行われた全国男女共同参画宣言都市サミットに「地域女性史をつくる会」からも三名参加することができ、他の自治体の首長から出た女性史編纂の重要性を杉並区長も聞いていた。「地域女性史をつくる会」は杉並の女性史を編纂しなければというメンバーの思いが一致し、2000年7月13日に区長に要望書を出した。
 
 お隣の中野区の女性史や他区の女性史を参考に持参していたが、区長からは即座に、次のように回答があった。

 それらの女性史はそれなりに立派に編纂されているが杉並は杉並らしいもの、@本棚に並べて置くだけでなく女性史を勉強していない人でも興味をもって手に取れる ようなもの A過去の勉強にとどまらず、これからの暮らしや地域活動に示唆を与えるもの B安価でコンパクトなもの、C区制七〇周年に開催予定している「サミット」に、できるだけ間に合わせる 。いわゆる他区で発行しているような「女性史」にならないことを要求された。

 「地域女性史をつくる会」は区長の意見を持ち帰り検討したところ、区長の意見は私たちが思っていたイメージとは違うが、区長が提案した内容も意味があることであり、区の財政難の中で発行できることは大きなチャンスと捉えて発行への意思を固めた。

  

●  区民が語り 区民が綴る


  善は急げと「地域女性史をつくる会」が中心となり、指導者となる学識経験者に杉並にお住まいの永原和子氏にご無理をお願いした。永原先生から石崎昇子氏・大門泰子氏という専門家の協力体制ができ、2001年2月に「杉並区女性史編さんの会」が発足した 。

 平成10年度区民企画事業の講座終了時に発足した 自主グループのメンバーは優先的に編さんの会に入ってもらうことにした。編さんのための協力者を広報で募集したところ大勢の参加があったが、編集の経験がある人や特に女性史に興味を持っている人など、杉並区内全域から平等に参加してもらい、且つ短期間の編さんに必要とする人たちにお願いすることにした。

 2001年4月二回、第一・第三金曜日に集い学識の先生を中心に「暮らし班」「仕事班」「活動班」「資料班」に分かれて杉並区内にお住まいの七十歳以上の女性の聞き取り、テープ起こしが始まった。原稿までも書くつもりで参加したのではなかったが、それぞれの担当箇所の原稿を提出することになっていった。
 
 区長に要望書を提出した時の一つには、区制70周年に杉並で行う「全国男女共同参画宣言都市サミット」に間に合わせるという約束の重みは、終始私たちにのしかかっていた。幸い優秀な編さんの会のメンバーが揃ったことで、仕事の進み具合は順調に思えた。勿論、学識経験者の先生のご努力があったからこそ短期間で完成できたことは言うまでもない。一方では女性史とはこんなに簡単に完成させてよいものかという疑問が投げかけられた。何よりも、聞き取りに快く協力してくださった七十歳以上の区民の方々には感謝の気持ちでいっぱい。
 
   

●明日への水脈


 思えば、杉の子会の方たちにお会いしたことによって、私たち自身何とかして記録に残さなければという気持ちになつた。岩田阿喜子さん、編さんの会ができる前に亡くなられた斉藤鶴子さんから快く杉の子会の機関紙をコピーさせていただいたことなど、一つひとつ懐かしく、そして温かい励ましをいただいた。杉並ならではの女性史が完成できたことは、そこに暮らす女性たちのしっかりした足跡があったからこそできたのであった。杉並の女性はすばらしいということばが聞かれるゆえんはここにあった。若いひとに是非読んでいただきたいこと。そして、次の女性史が新しい人たちによって綴られることを願っている。 

 区民の要望を受けて支援して下さった当初の柿本博美課長さんの存在が杉並の女性史が完成する架け橋になった。みなさまありがとう。

  小林五十鈴


杉並区女性史編さんの会
       杉並区永福3-50-16小林方  tel・fax 03-3324-0316
 

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《読後の感想》

●面倒な資料集かと思っていたが、手にとってみてビックリ。やわらかな山茶花の表紙。どの記事も、とても感動的で興味深く、女性史に興味の無い人でも、ぐいぐい読める本ですね。暮らしを切り開いてきた先輩たちの歴史が、区民の生の声で綴られていて、とても、感動的です。まさに、これこそが「人が創る歴史」だと、生きていく勇気がわいてくる本です。写真も資料もふんだんに盛り込まれて、ずっと手元におきたい一冊になりました。

 竹内 ゆかり


『すぎなみ文化通信』2003年1月号に掲載


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