農園デビュー   

      成田西区民農園 奮戦記

◆都会育ち◆ 〜隣の畑は・・・?


杉並に住んで10年余、毎年応募していた区民農園に初めて当選した。

 3月1日から利用可との事であったが、今年の3・4月は忙しく、取り敢えず土おこしと石灰による中性化だけ行い、苗の植え付けや、種まきは5月の連休に行った。先輩から借りた本を頼りに、とうもろこしや枝豆にビニール袋を切ってかぶせた。マルチングと言うらしい。園芸店の店先で買ったトマトやピーマンのか細い苗に支柱を立てた。
 
 どうにか農園らしき物になったが、その頃周りの畑を見るといずれも見事に成長し、中にはとても素人の畑と思えないところもある。どうやら苗や道具も農協や田舎から取り寄せているらしい。都会育ちの私たち夫婦は、野菜作りの経験はほとんどない。何だか場違いな気がして少々焦った。

しかし今年は5・6月と晴天に恵まれた。そして歩いて一分という近さを活かし、朝に夕に夫婦で駆けつけ虫取りや灌水に励んだ結果、どの野菜も順調に成長した。

 そんなある日の夕方、近くの、それはそれは立派なトマトを育てている婦人に声を掛けられた。「お宅のミニトマト素敵ね凄く好い色をしていてお部屋に飾りたい位」。
 
 そのころ毎朝収穫していたミニトマトは全然上に伸びないのだが、鈴なりに実を付け完熟トマトらしい味わいを持っていた。「味も好いですよ。」私は我が子を誉められたように嬉しく、素早く答えた。「春菊の花も奇麗なのね知らなかった。」、何だか分からず、妻が冗談で生やしていた茎は奇麗な黄色い花を咲かしたが、そうか春菊だったのか!妻が「よろしかったらどうぞ」と花を切って差し出すと喜んで受け取り、「隣の芝生ならぬ隣の農園はみんな素敵に見えてしまう。」と言って笑った。

 そうか、そうだったのか。私だけでなく、みんな周りがよく見え自分の所は淋しく見えているのか。そう言われて、自信を持ってみれば、うちのピーマンや枝豆は農園の中でも、結構立派な方だ、出足が遅く貧相に思えただけなのだ。

 何だか急に周りの人たちが身近に思えてきた。他の畑の人たちに色々工夫を教わろう、いつ見ても質問責めに合っている指導員の様な老人にも今度思い切って相談してみよう。

 職場で、毎朝早起きして農園に行っていると話したら、「老後はバッチリね」と笑われた。しかし公園デビューならぬ農園デビューを果たした私としては、今まで考えもしなかった地域の方とも知り合い、当分ハマッテいられそうだ。

     『すぎなみ文化通信』 1999年8月号 掲載

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